売却について
転勤や転職、家族や収入の変化などによって、家を住み替えることになった場合、持ち家をどうするのか考えなくてはならない。その選択肢は主に3つある。「売却する」「空き家のまま維持する」、そして「賃貸に出す」の3つだ。
売る場合、建物を維持する必要がないので精神的に楽である半面、住宅ローン返済が残っていれば、その残債を一気に清算する必要がある。空き家として維持する場合は、住みたくなったらいつでも住めるメリットはあるが、建物の劣化や防犯上の心配が生じる。貸す場合は、家賃収入を得られるメリットがあるが、逆に空室や家賃滞納などのリスクがある。
では、持ち家をどうするかの具体的な手段について、それぞれのメリットやデメリット、注意点を考えてみよう。
売却する
メリット
保有し続けることで発生する費用(固定資産税や維持費など)がかからない
別の物件を購入する際に、残債がない場合は売却代金を購入資金に充てられる
建物の維持やメンテナンスの手間がかからず、精神的に気楽でいられる
デメリット
住宅ローンの返済が残っていると、売却時に残債を一気に返済しなくてはならない。売却時に残債と同程度もしくは上回る額で物件が売れないと、貯金などの自己資金を清算に充てることになる
売却の際には仲介手数料や登記費用など、ある程度まとまった費用がかかる
不動産という資産を失う
売却価格で残債の清算と諸費用の支払い分をまかなえればベストだが、よほど立地のよい物件でない限り、購入価格より売却価格が高くなるケースはまれだ。売却する場合はしっかりした査定で物件の売却価格を見極めることが必須となる。
空き家のまま維持する
メリット
持ち家に戻ることになったら、いつでもすぐに戻れる安心感がある
不動産という資産を保有し続けられる
デメリット
親族や管理会社などに定期的な管理を任せる必要がある
窓を閉め切ったままにしておくと建物が湿気で傷みやすいため、痛みを避けるには定期的に通気させる手間がかかる
不法侵入など防犯面の心配が生じる
租税公課や維持費などコストがかかり続ける
セカンドハウスや別荘として自分で使用するなら維持管理しやすいが、できない場合は、ある程度の維持費が発生するものと考えたほうがよい。一戸建ては庭のメンテナンスも必要だし、マンションなら管理費や修繕積立金が引き続きかかるのも忘れないように。
賃貸に出す
メリット
賃貸経営による家賃収入が得られる
将来、その家に戻って住むこともできる
不動産という資産を保有し続けられる
デメリット
空室期間で収入がない期間が生じる可能性がある
家賃滞納などの入居者トラブルが発生する可能性がある
建物の劣化や設備の故障による修繕費、固定資産税などの経費が発生する
確定申告、物件の維持管理など、賃貸経営上の手間がかかる
以上のように、3つの選択肢のそれぞれにメリット・デメリットの両面がある。賃貸に出すことのみを考えていたとしても、場合によっては貸さないほうがよいケースもある。何がベストな手段なのか、「売る」「空き家のまま」といった手段も検討して、自分にとってよりよい手段を選んでいくといいでしょう★
賃貸経営の最大のメリットは、家賃収入を得られることだ。
維持費などの経費や税金を差し引くことになるので、
これが丸々所得となるわけではないし、立地や築年数などの条件によっても異なるが、ある程度の収入は見込めることになる。また、将来、その家に戻って住むという選択肢も保てる。
賃貸経営には家賃収入を得られるという大きなメリットがある半面、いろいろなリスクが伴う。
入居者が決まらなければ、もちろん収入はその間、ゼロだ。
その物件の住宅ローンを完済している人やローンを組んでいない人は、資金回収についての問題はないが、家賃収入をその物件のローン返済に充てる場合は、空室期間には自分の貯蓄や給与などを返済資金に回すことになる。転居先の新居にお金がかかる人は二重に住居費がかかることになるのだ。
また、部屋が空室でも維持・管理の費用は発生していることも忘れずに。建物と土地には毎年、固定資産税がかかるし、さらにマンションでは管理費と修繕積立金が毎月かかる。一戸建ての場合は、室内の空気の入れ替えや庭の手入れなどの管理の費用が発生する。
建物は時間とともに劣化する。また、多くの住宅設備は耐久年数が十数年ほどとされ、いずれ、故障や素材の劣化、性能・機能の低下が生じる。交換や修繕にかかる費用は貸主の負担だ。想定されている耐用年数よりずっと早く故障してしまうこともあるので、そうしたことを想定しておく必要もあるのだ。
年数が経って建物が古くなれば、その分、賃貸物件としての魅力が減少しがちに。そのため、家賃を減額しないと入居者が決まらなくなる場合が考えられる。
また、周辺環境の変化や賃貸物件の供給数の変化、入居者ニーズの変化などによって賃貸相場が変動して、家賃を値下げせざるを得なくなることもある。
例えば、郊外のファミリータイプ物件を所有していたとして、周辺に似たような賃貸物件が増えることになれば、家賃相場が下落してしまうケースが見られる。
入居者が家賃を滞納する、騒音やゴミ出しなどで近隣に迷惑をかける、退去時に原状回復費用でもめるなど、入居者とのトラブルが発生する可能性もある。賃貸経営は相手あってこその商売なのだから、そうした心構えも必要だ。
地震、台風、水害などで建物に被害が及ぶことも考えられる。修理する場合は費用がかかるし、被害内容によっては、賃貸物件として維持できない状態になることも。
募集条件
家賃の設定が相場より高い
敷金・礼金・更新料などの条件に問題がある
入居希望者が少ない時期である
賃貸物件や物件内容のニーズが少ない地域である
物件の魅力
立地・築年数・間取り・設備などが、競合物件に比べて劣っている
メンテナンスが行き届いていないなど維持管理に問題がある
募集活動
広告宣伝が有効でない
仲介の不動産会社が熱心でない
家賃や敷金・礼金の設定などが相場や時期的・地域的ニーズに反している場合、募集条件の見直しを検討する必要がある。家賃を減額する場合、賃貸経営や家計の収支に影響が生じるが、空室期間が長引いてしまうよりましと考えたい。空室期間は収入がゼロというだけでなく、物件の維持費や税金がかかる分、赤字となるからだ。
具体的には、家賃を下げる、敷金を家賃2カ月分から1カ月分に、礼金をゼロにするなどだ。仲介の不動産会社と十分に協議して決めよう。
ただし、家賃を下げることだけで空室を解消しようとするのは避けたい。そうした場合、競合する周辺物件も家賃を下げるなどの対応が発生して、値下げ合戦に発展しないとも限らない。重視したいのは、物件の特徴を活かしてさらに物件の魅力を増し、周辺物件と差別化することで、入居者のニーズをとらえることだ。
設備や室内仕様、外まわりが古い・汚れているなど、魅力的でない場合、リフォーム費用をかけてでも、グレードを高めると、希望の家賃設定どおりでも入居者が決まる可能性が生じる。特に、キッチン、洗面、トイレ、浴室など清潔感を求められやすい水まわりを新しくすると、魅力が増す。
例えば、賃貸物件に多い「ペット飼育不可」「入居者による物件のカスタマイズ不可」「楽器演奏不可」などといった禁止事項を逆に可能としたり、高齢者や外国人などが入居しやすい条件に変更するなど、供給数が不足している特定のニーズに応える。そうすることで、入居者が決まりやすくなるわけだ。
不動産会社に募集活動の内容や反応を確認して、空室解消のための活動強化を依頼する。特別な広告宣伝をする場合は費用実費がかかることもある。強化内容についてどんな方法で行うのかを確認しよう。