相続について
多くの空き家は、親がもともと住んでいた自宅、つまり実家です。そして、長い間空き家になってしまっている家は、相続問題が複雑に絡み合ってしまっているものも多くあります。このような相続問題の解決には、多大な労力、費用、そして時間もかかってしまいます。そうならないためにも、相続に関する正しい知識を持ち、備えることが重要です。また、既に相続問題が起きてしまっている場合、問題を整理して、どのような問題があって、誰に何を相談すれば良いかを把握することが問題解決の第一歩となります。
相続が起きるとさまざまな手続きが必要となります。ただ、相続発生後は法事も多く、気付いたら手続きができる期間が過ぎていた!というお話は少なくありません。そうならないためにも、相続手続きは期限と、どの手続きを自分で行い、どの手続きを専門家に任せるかを決める必要があります。
※以下の流れをご紹介する以外ご紹介する手続き以外にも必要な手続きがありますので、詳細は、相続関連の書籍やホームページ、弁護士相談等でご確認ください。
相続前 親が生前のうちに準備すべきことは、家族できちんと話し合うことです。
相続開始 親が亡くなると、相続手続きが必要となります。
死亡届の提出、火葬などの手続き、通夜・葬式・初七日
相続財産を単純承認や限定承認、または相続放棄の手続きが必要です。
3ヶ月以内
遺言書がない場合、法定相続人は遺産をどのように分配するか、遺産分割協議書を作成する必要があります。
銀行口座や株式の他に、不動産や土地などの相続登記の必要があります。
相続税は、相続によって得た財産に対して算出され、10ヶ月以内に申告・納付しなければいけません。
10ヶ月以内
空き家が社会問題化する背景には、親世代が住んでいた自宅をうまく子供世代に相続できていないということがあります。「子どもたちの好きにすれば良い」と、自宅に対する親の想いも伝えないまま、自宅を相続させてしまうことがほとんど。そのため、子どもたちは空き家となった実家の片づけや解体、売却に必要以上の罪悪感を抱いてしまい、長い間空き家を活用できずに苦しんでしまうケースが多くあります。
実家をどうして欲しいかという親の想いを聞かされていない子どもたちは、空き家になってしまった実家をどうしたら良いか分かりません。利用する予定がないため売却をしようという人がいたり、親が一生懸命に守ってきた土地だと売却に反対する人もいます。どちらも親の気持ちを汲もうとしてお互いに主張するため、自分が折れるということは、亡くなっている親の気持ちを裏切ることになってしまうため大きな罪悪感を抱いてしまうのです。
また、兄弟同士で話し合いがまとまっても、その配偶者や子供たち(元所有者の孫たち)が話に加わり、せっかくまとまった話が壊れてしまうことも多々あります。
空き家となった実家をスムーズに活用するためには、親の気持ちを子どもたちにしっかりと伝えることが大事です。一番良いのは兄弟全員を集めて家族会議を開き、そこで親の想いを伝えることです。決して、長男だけなど一部の子どもたちだけに伝えるのは止めましょう。トラブルの原因となります。面と向かって話をするのが恥ずかしければ、遺言書やエンディングノートなどに残しても良いでしょう。どのような形であれば子どもたちに親の想いが伝わることが重要なのです
子どもにとって、空き家の多くは、親が住んでいた自宅、つまり実家です。そして、相続が発生してから空き家の片づけや管理方法、どのように活用するかについて初めて考えたという方がほとんどです。ただ、空き家の活用(解体や売却)には大きな精神的負担があり、なかなか前に進むことができないという方も少なくありません。そうならないため、相続が発生する前から準備をしておくことが重要です。
相続が発生すると手続きや法事などで忙しくなってしまい、空き家となってしまっている実家をどのように管理したり、活用していくかというのを考える余裕がなくなってしまうケースが多いようです。そうならないためにも、相続発生前から実家をどうするかを話し合っておくことで、冷静に話し合うこともできトラブルを抑制することができます。また、兄弟で意見がまとまらない場合、どうしたら良いか親と話し合うこともできます。子どもたちからは切りだしづらい話ですが、相談できるうちにしておくことが非常に大事です。
相続した空き家で皆さん苦労されるのが遺品整理です。相続後に片づけようとすると、全てが想い出の品になってしまい、捨てることができなくなってしまうのです。そのため、相続が発生する前から少しずつでも身辺整理を始めるようにしましょう。大事なのは、全ての物を片づけようとするのではなく、必要な物だけを取り分けておくようにすることです。必要だと思った物は、別の場所によけておき、他の兄弟とも話し合いながら誰がどのような形で残していくのかを話し合うようにしましょう。
空き家などの不動産で相続が発生した場合、その空き家を管理する責任は相続の権利がある人全員で共有します。適切な管理ができておらず、他の人に損害を与えてしまった場合(例えば、相続した実家の屋根が台風で飛んでしまい隣の家の窓ガラスを割ってしまった場合など)、その責任は相続人である子供たちが負うことになるのです。
相続協議が終わるまでの間に相続財産(現金含む)を使ってしまうと、借金を含めた相続財産全てを単純相続(全ての権利義務を相続すること)したことになってしまい、その後相続放棄ができなくなってしまいます。ただ、空き家の維持管理をするための費用は、相続財産から支払いをしても単純相続の原因にはなりません。
親の実家を相続したが、活用や管理が難しいためできれば相続したくない、
というご相談が増えています。
空き家を相続放棄するべきか、相続放棄をするにはどうしたら良いのか、
相談する専門家は誰なのか
相続放棄をする場合、空き家だけでなく全ての相続財産を放棄する必要があります。全ての相続財産とは、土地や建物といった不動産だけではなく、預貯金や有価証券(株券)ももちろん含まれます。また、宝石や貴金属、骨董品も含まれますので、思い出の品も換価できるものは放棄することになってします。そのため、相続財産の価値がマイナスになってしまわないかという視点の他に、相続する財産の全てを放棄しても大丈夫と思えるかどうかという視点も重要になります。
空き家を相続放棄する場合、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があります。ポイントは相続開始を知った日から3か月であり、被相続人の死亡から3か月ではないということです。
一緒に住んでいる親族などは、死亡をしたことをその当日に知ることになります。
疎遠になっている親族などは手紙などで死亡を知ることも多いです
例えば、配偶者が相続放棄したことで兄弟が法定相続人となる場合がこれに該当します。
相続放棄の期間はさらに3か月間延長することも可能です。どうしても考える時間が足りない場合は必ず期間伸長の申立をするようにしましょう。
空き家を相続放棄するには家庭裁判所へ申述書などを提出する必要がり、もちろん自身で全ての手続きを行うことができます。ただ、多くの書類を集める必要があったり、前述の通り期間が制限されているため、必要であれば専門家の力を借りるようにしましょう。相続放棄に関する相談先は司法書士または弁護士になります。司法書士は相続放棄に関する手続きを代行することができ、弁護士は代理人として手続きを行うことができます。
司法書士が行う手続きの代行とは、書類の作成や提出などを代行することです。書類には申述人(相続放棄をする人)の署名押印が必要になり、家庭裁判所からの照会などは申述人が行う必要があります。弁護士を代理人として手続きする場合、全ての必要書類を代理人が作成することができ、家庭裁判所からの照会なども代理人に対して行われます。何を依頼したいか、費用はどれくらいかかるかなどを比較検討した上で、相談先を決めるようにしましょう。