その他
土地の売却や家の新築など不動産に付き物なのは自己の所有する土地と隣地とのの境界線の確定です。
その時何の問題もなく双方が納得できれば良いのですが境界線について争いがある場合弁護士を立てて裁判…となると解決も長引きがちです。
そんな時に利用したいのが筆界特定制度です。
登記官が、専門家の意見を踏まえ、土地の筆界(公法上の境界)の位置を特定する制度です。
土地は重要な資産ですが物理的な切り分けができないために、どこまでが自分の権利の対象かを足り得るためには、何らかの方法で区分けをしておかなければなりません。
この区分けについて、私人によって自由になし得るとすれば、権利関係が混乱し、法的な安定性を欠きます。そこで、土地の区分けは、公法に基づくものとされます。公法上の、土地と土地との境目となる線(公法上の境界線)が、筆界です。
筆界によって区画された土地の単位が、筆であり、土地の単位は、登記によって定められます。
筆界は、ある土地が登記されるにあたり、その土地の範囲を区画するものとして定められた線です。所有者同士の合意によって変更することはできません。
私法上の境界とは、所有権の範囲を画する線です。
私法上の境界も、多くの場合には、筆界と一致しますが、私人間の法律関係においては、筆の一部が売買されたり、あるいは時効取得されたりすることがあり、そのような場合には、私法上の境界は筆界と異なることになります。
私法上の境界は、所有者同士の合意によって変更することができます。
境界に2つの意味があることに対応し、境界に関する争いにも2つの場面が生じます。公法上の境界(筆界)を争う場面と、私法上の境界(所有権の範囲)を争う場面です。
このうち、公法上の境界(筆界)の争いについて、筆界を迅速かつ適正に特定し、紛争の解決を図るため、平成17年4月不動産登記法改正によって、筆界特定制度が創設されました。平成18年1月に施行されています。
筆界特定の手続は、申請によって、開始します。
申請を行うことができるのは、土地の所有者として登記されている人及びその相続人などです(不動産登記法131条1項)。
申請先は、対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官です。
筆界特定の申請があったときは、筆界特定登記官が筆界特定を行います(同法125条)。
筆界特定登記官は、登記官のうちから、法務局又は地方法務局の長によって指定されます。
筆界特定の手続においては、筆界調査委員という専門家が、これを補助する法務局の職員とともに、土地の実地調査や測量を含む様々な調査を行った上(同法134条ないし137条)、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官が、その意見を踏まえ、現地において筆界を特定します。
申請人にも、意見及び資料を提出する機会が与えられます。
筆界特定登記官は、筆界特定書を作成することによって、筆界特定の判断を示します(同法143条1項)。筆界特定書は、登記所において筆界特定書が保管されます(同法145条)。筆界特定書によって、紛争解決が図られるとともに、第三者からみても、筆界特定がなされたことを、知ることができるわけです。
ところで、筆界特定は、新たに筆界を決めるものではなく、調査の上、もともと存在していた筆界を、筆界特定登記官が、明らかにするものです。又、法的な効力のある筆界の最終的な確定は、裁判所によって行われます。
この筆界特定制度は平成18年度に始まったのですがある法律事務所のHPの記述によると
平成17年以前は、境界トラブルの解決は、裁判所の裁判手続(境界確定訴訟)で行われており、結論が出るまでに平均で「約16ヶ月」の期間がかかっていました。
平成18年に筆界特定制度が新設されたことにより、境界の特定に要する期間は平均で「約8.6ヶ月」となりました。実際には、手続をスムーズに進めることにより「6ヶ月」以内に終わるケースも増えています。
との事でこの制度を利用することによって土地の境界線問題が起きてから決着するまでの期間が短縮されるというメリットがあります。