相続について
2015年の税制改正により、相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、これまで無関係だと思っていた人の中にも相続税の支払いの義務が発生する場合が出てきました。親と同居することで相続税額を抑えることができますが、確実に減額するためには一定の同居期間が必要なので早めに始めることが大切です。
不動産の相続税には、小規模宅地の特例というものが有ります。これは、居住用宅地であれば330平方メートルまでの部分の評価額を80%減額することができるという制度です。2割負担となるため、評価額が基礎控除の範囲に収まれば相続税の支払いは発生しないことになります。この特例を受けられるのは、被相続人の配偶者が不動産を相続した場合や、同居していた親族が相続した場合などです。別居の子が相続するケースでも、実家に親が一人暮らしだった場合でマイホームを持っていなければ、この特例が適用されます。
親の家に同居していないマイホームを持っている子どもが、親の不動産を相続した場合は小規模宅地の特例を受けることができません。仮に自宅の相続税評価額が6000万円で、相続人が2人の子どもであった場合、控除額は3000万円+600万円×2=4200万円となり、6000万円-4200万円=1800万円が相続税の対象となります。マイホームを持つ同居していない子どもには、1800万円÷2=900万円に税率10%をかけて求めた90万円ほどの相続税を支払う義務が発生することになります。
もしも同居している子どもが実家を相続した場合で、小規模宅地の特例に合致すれば、前述の例では6000万円の相続税評価額が80%減額されて1200万円となり、基礎控除の範囲内になるため相続税は発生しないことになります。ただし子どもがもう1人いるため、同居している子どもだけが全てを相続すると不平等が発生します。トラブルを避けるためには遺産分割について別途考える必要が出てくるでしょう。同居の子が相続した場合は、相続税申告期限までは自宅を保有し住み続ける必要があることに注意しましょう。
相続税の減額を目的に親と同居し始めても、同居の期間が短いと税務署が同居の事実を認めない場合があります。マイホームを持っている人が我が家を賃貸にして、「マイホームを持たない子」という条件を満たそうとすると3年以上の期間が必要となります。このことから親との同居の場合も最低3年間ほどは一緒に住んでおく必要があると考えられています。税務署からダメ出しされずに確実に相続税を減額するなら、早めに同居を始めると良いでしょう。
税制改正により不動産相続による相続税の支払い義務は他人事ではなくなりました。賢く節税をするためには、どんな場合に相続税が減額されるのかを正しく知っておくことが重要です。確実に減税するには長い同居期間が不可欠ですので、いざという時に後悔しないように事前に対策を立てておくことをお勧めします。