相続について
賃貸管理で退去立ち合いの時にたまにある事例で借主から「エアコンを次の部屋で使う予定がないので置いていきたい」といった相談を受けることがあります。
また「置いていくエアコンを買い取ってくれないか」という話となると貸主は買い取らなければならないのでしょうか。
今回のケースではエアコンが造作に当たります。
まずは造作とは何を指すのかについて説明していきます。
エアコンに限らず、どのようなものが造作に当たるのかについては、一般的には「建物に付加されたもので、貸借人が所有し、かつ、建物の使用において客観的に便宜を与えるもの」(全日本不動産協会から引用:https://www.zennichi.or.jp/)とされています。
分かりやすく要約すると、ここでの造作の定義は「便利に暮らすために新しく取り付けた借主の所有物」となります。
さらに、エアコンの場合は「建物に付加されたもの」となるので「その建物に取り付けたことによって効用があり、取り外されてしまうと造作としての価値が下がるもの」となります。
また、今回はエアコンで話をしていますが他に造作買取請求権の対象である造作として挙げられる例としては
畳や建具、雨戸、電気、ガス、水道などの引き込み部分、流し台の増設部分が挙げられます。
造作として認められないものの例としては
家具(利便性がよくなっても独立性が強いもので、排除しても物件自体の価値が減少しない為)
また、仮に戸棚など建物に付加されたものを設置したとして、借主がその建物を特殊な目的で設置した場合は造作とは認められません。
造作買取請求権とは
「建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある場合、賃貸借期間が満了または解約申請による終了時に、建物の賃借人に対し、その造作を時価で買い取りを請求することができる。」と定義されています。
そのため入居者は一定の条件を満たす造作については賃借人に対して買取請求ができるのです。
では、入居者の所有物である造作を買い取ってほしいと言われたときに、貸主が買い取る義務があるかないかは、何で決まるのでしょうか。
造作の設置に同意をしていたかしていないかによって買主が買い取る義務が発生するかどうかが分かれます。
この同意は、設置前である必要はなく、設置後でもかまいません。
同意がある場合と同意がない場合に分けてみてみましょう。
このような場合は、入居者は大家さんにエアコンを買い取りの請求する権利が成立してしまいます。
・造作買取請求権を排除する特約がない
・造作の取り付けに同意している
造作の同意を得て設置していた場合、必ず買い取らなくてはいけないのでしょうか?
造作買取請求権は強行規定ではないので、造作を買い取らない旨を契約条文内に記載しておくことで排除することが可能です。
賃貸借契約書に以下の文章を盛り込むことで
「賃借人が賃貸人の同意を得て造作を付加したとしても、賃借人は造作を買い取るよう賃借人に請求できない。」
「乙は甲に対して甲の同意を得て、付加または買い受けた造作について買取請求を行わないものとする。」
同意の上付加した造作の買い取りも拒否することが出来ます。
貸主の許可なしに造作の設置をしていた場合はどうなるのでしょうか?
借主には、造作買取に関して「造作買取請求権」が定められています。
しかし、これは貸主の同意を得て建物に付加した造作がある場合に限ります。
つまり、同意なしの無断で設置された造作に関しては、買い取りをお願いされても貸主が買い取る義務はありません。
むしろ、原状回復を請求する権利が貸主にはあるのです。
今回のような「エアコン買い取ってください」という借主の申し出に応じる義務はなく、前の状態に戻してほしいのであれば貸主は借主に「エアコンを取り外してください」ということができるのです。
ところで、エアコンを設置していた壁のビス穴やエアコン本体の跡の修繕費を負担させる必要があるのかも問題になる場合があります。
これについては国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より
“エアコンの設置は一般的な生活に必要なため、通常消耗として借主に負担の義務はない”とされています。
入居者が取り付けた造作の買い取りに関しては、契約で十分な取り決めをしていることが重要です。
最近では事前に契約事項や特約で賃借人の造作買取請求権を排除しておけばよいため、エアコンなど、その造作を取り除いても不利益を受けないものであれば、取り付け自体に同意しないことは許されないと考える解釈が主流となります。
今回のようなエアコンの場合は、買い取ってあげてもいいかなと思う貸主もいるかもしれません。
ですが、ほかに設置した不要なものも買い取ってくれないかと借主にお願いされる場合もあります。
不要なものを買い取らなければならない事態に陥らないためにも、今使っている契約書を再度確認してみてください。